レンタルサーバーの選び方

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  • 投稿者 : 大月 茂樹

Webビジネスの重要なインフラであるレンタルサーバーにコストをかけるのは当然のことです。安価でディスク容量が大きなものがコストパフォーマンスが高く、良いレンタルサーバーであるということではなく、本記事で解説する選び方のポイントを参考に、ビジネスに適したレンタルサーバーを選んでください。

安価でディスク容量が大きなものが良いレンタルサーバー?

Webサイトの公開に必要なレンタルサーバーは、安価でディスク容量が大きなものがコストパフォーマンスが高く、良いレンタルサーバーであるとして選ばれることが多いようです。最近ではワンコイン、月額利用料100円で借りられるサーバーや、ディスク容量無制限といったサーバーなど、数年前ではとても考えられなかったような内容のレンタルサーバーサービスを受けられるようになりました。

しかし、特に利用料金の安価さのみでレンタルサーバーを選んでしまうと、Webサイトの運用に支障をきたすトラブルに遭遇する可能性(危険性)が高くなるということを認識しておくべきです。具体的には、

  • レンタルサーバーの動作が重い
  • Webサイトの表示速度が遅い
  • Webサイトが表示されない
  • Webサイトのデータが消失する

などといったトラブルの発生が挙げられます。個人のブログ程度であればさほど問題ではないですが、ビジネスに関連するWebサイトであれば、ことは重大です。

本記事では、まずレンタルサーバーサービスで最も利用されている「共用サーバー」について解説し、上述したようなトラブルがなぜ起きるのか?そして、それを踏まえてのレンタルサーバーの選び方を解説します。

共用サーバーとは?

さまざまなサービス形態があるレンタルサーバー

一口にレンタルサーバーと言っても、さまざまなサービス形態があります。代表的なものを挙げてみましょう。

  • 共用サーバー
  • 専用サーバー
    • マネージド(root権限なし)
    • アンマネージド(root権限あり)
  • VPS
  • クラウドサーバー

これらの中で最も利用されている「共用サーバー」はその名から推察される通り、1台の物理的なサーバーを複数の契約者で共用するサーバーであり、そのサービスです。一方、「専用サーバー」は1台の物理的なサーバーを契約者1名(1社)で占有するサーバーであり、そのサービスです。住居で例えるとわかりやすいでしょうか。共用サーバーはアパートやマンションといった集合住宅、専用サーバーは一戸建ての住宅です。

サーバー
「サーバー」は、ブラウザーからのページ表示のリクエストへ応答しWebページのデータを返す、あるいは、データ抽出のリクエストへ応答しデータを返すなどといったような、「リクエスト(要求)に対して何らかのサービスを提供する役割を果たすプログラム」を指す言葉です。一方、そうしたプログラムを稼働させる専用のコンピューター機器のことを指す言葉でもあります。本記事では後者の意味で、さらにわかりやすよう「物理的なサーバー」と表現しています
データセンター
サーバーはネットワーク設備、耐震設備、電源設備、空調設備などが整い、入退室のセキュリティーもしっかりと管理され24時間365日の有人監視がされているデータセンターへ設置されます。サーバーの利用料金には、それらに必要なさまざまなコストが含まれています
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共用サーバーは物理的なサーバーを複数の契約者で共用、専用サーバーは契約者1名(1社)で占有するサーバーであり、そのサービスです

サーバーはレンタルサーバー会社が管理しています。共用サーバーでは、管理にかかるさまざまなコストを契約者どうしで折半することで、安価に利用できるようになっています。一方、サーバー1台にかかる管理コストを契約者1名(1社)で全額負担するのが専用サーバーです。共用サーバーと専用サーバーとの間に価格差があるのは、そうした違いがあるからです。

専用サーバーでも、マネージド(root権限なし)は共用サーバーと同様にそれらをレンタルサーバー会社が代理で行ってくれるので、そのコストが利用料金に含まれますが、アンマネージド(root権限なし)なサービスはOSやサーバーソフトウェアのメンテナンスやセキュリティアップデートを契約者自身が行うので、利用料金はマネージド(root権限なし)と比較すればとても安価になります。

「VPS(Virtual Private Server – 仮想専用サーバ)」は、コンピューターの仮想化技術を活用したサービスです。1台の物理的なサーバー上に複数台の仮想的なサーバーを起動し、それぞれが専用サーバーでありながらも共用サーバーと同じく管理コストを契約者どうしで折半することで、専用サーバーを安価に提供することを実現します。

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Mac上にWindows XP、Windows Vista、Windows 7を起動した様子。コンピューターの仮想化技術によって実現されます

少々用語が難しいと思いますので、わかりやすい例を挙げてみましょう。上は、私のパソコンのデスクトップのスクリーンショットです。私はMacを使っていますが、コンピューターの仮想化技術を使えば、このようにMac上にWindowsを起動させることも、さらには、複数のコンピューターを同時に起動させることが可能です。このように、仮想化技術を利用して1台の物理的なサーバー上に仮想的なサーバーを起動し提供しているサービスがVPSです。

「クラウドサーバー」については本記事の末尾で触れますので、ここでの解説は割愛します。

落ちないように、さまざまな制限が設けられているのが共用サーバー

改めて…ですが、共用サーバーとは1台の物理的なサーバーを複数の契約者で共用するサーバーであり、そのサービスです。管理にかかるさまざまなコストを契約者どうしで折半することで、安価に利用できます。

共用サーバーの一般的な定義はそうですが、レンタルサーバー会社が行っている管理の内容をもとに共用サーバーとは何か?を別の視点から考えると、違った定義ができます。

それは、共用サーバーとは、

  • 少々負荷の高い処理が実行されても落ちてしまわないように、レンタルサーバー会社により設定されているサーバー
  • そもそも負荷の高い処理が実行できないように、レンタルサーバー会社により設定されているサーバー

であるというものです。

共用サーバーは、複数の契約者が1台の物理的サーバーを共用するので、ある契約者が負荷の高い処理を実行しサーバーのCPUやメモリを浪費してしまうと、他の契約者がそれらを使えなくなってしまいます。負荷の高い処理とは、日頃あなたがパソコンで行っている処理で例えるならば、Excelを使った膨大な量のデータの集計処理や動画編集処理などです。その処理が重過ぎてアプリが反応しなくなったり、他のアプリも動かなくなったり、キーボードやマウスの入力を受け付けなくなったりといった経験はあるはずです。あなたしか使わないパソコンであればあなたが我慢したり、待ったり、どうにもならなくなれば再起動したりすれば良いですが、複数の契約者が共用しているサーバーでそのようなことがあってはなりません。

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ソーシャルメディアを経由してのWebサイトへのアクセス集中の例

Webサイトへの瞬間的なアクセス数増加も負荷の高い処理の一例です。昨今では、ソーシャルメディア経由の瞬間的で急激なアクセス数増加は決して珍しいことではありません。ある契約者のWebサイトへアクセスが集中することによって他の契約者のWebサイトの表示速度が遅くなったり、サーバーが落ちてしまって全ての契約者のWebサイトが見られなくなったりすると大変です。

そうしたことが起きてしまわないよう、少々負荷の高い処理が実行されてもサーバーが落ちないように、そもそも負荷の高い処理が実行できないように、さまざまな設定が施され制限が設けられているのが共用サーバーなのです。

なぜトラブルが起きるのか?

共用サーバーの利用料金を下げる方法

共用サーバーに設けられている制限の最たるものは、サーバーのCPUやメモリの使用制限です。もしあなたがCMSやブログツールでバックアップデータをインポートしようとしたときに、処理がタイムアウトしてしまったり、バックアップデータが大き過ぎてインポートできなかったりといったトラブルに遭遇したことがあるならば、それはそうした制限によるものです。

この制限を厳しくすれば、1台の物理的なサーバーをより多くの契約者で利用してもらうことができ、利用料金を抑えることができます。先に、共用サーバーをアパートやマンションに例えましたが、1部屋を小さく取れば1棟により多くの部屋を作ることができ、より多くの入居者が入居できるようになり、賃料を抑えることができるのと同様です。

つまり、安価に借りられるレンタルサーバーは、制限を厳しくし共用度を上げることで実現されているものであり、共用度を上げれば上げるほど利用料金は下げられるということです。月額100円で利用できるレンタルサーバーは、共用度がかなり高いわけですね。

利用料金を下げる方法は他にもあります。性能の低い安価なサーバー機器を使用する、安価なネットワーク機器を使用する、他所でお役御免となった中古機器を利用する、サーバーを設置するデータセンターの設備を簡素にする…などなど、利用料金を下げる方法はいくらでもあるのです。

これらはレンタルサーバーの契約者からすれば良くない方法ばかりですが、もちろんレンタルサーバー会社の企業努力による方法もあります。例えば、広告宣伝費をかけない、地代の安いところへデータセンターを建設するといったものがあります。

逆に、安価ではないということは、それなりのものを使用し機器の信頼性を確保し、設備投資をし、キチンとした監視を行っているからこそ、と言えるのです。

制限が厳しいからトラブルが起きる

昨今、WebサイトへはCMSやブログツールが導入されることがほとんどです。ブラウザー上にWebサイトが表示されるまでには、その裏側でとても複雑なプログラムが動作し、サーバーのCPUやメモリが大量に消費されています。ECサイトでは複雑なショッピングカートシステムが動作し、高機能であればあるほどCPUやメモリを消費します。そして、動作に要する時間も長くなります。

そうしたWebサイトを、例えば月額100円などで利用できる共用サーバーで動作させるとどうなるでしょうか。本記事をここまで読み進めたあなたであれば容易に想像がつくはずです。共用度を上げるためにCPUやメモリの使用が大きく制限されていれば、

  • レンタルサーバーの動作が重い
  • Webサイトの表示速度が遅い

といったトラブルになるのは当然です。性能の低い安価なサーバーが使用されていれば、なおさらでしょう。

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サーバーへの同時接続数の制限に達した場合に表示される “Service Temporarily Unavailable” の画面

また、安価な共用サーバーで良くトラブルの原因となるものとして、サーバーへの同時接続数の制限があります。上に示すような画面をご覧になったことは1度や2度はあるはずです。これは、Webサイトへのアクセスが瞬間的に上昇し、サーバーへの同時接続数の制限にかかってしまったときに表示される画面です。

あるWebサイトへのアクセスが際限なく増加し、その全てに応答するとCPUやメモリが浪費され、同じサーバー上の他のWebサイトへ影響が及んでしまわないように設けられているのが同時接続数の制限です。共用度が高い安価なサーバーであれば、当然この制限も厳しく設定されています。先に、昨今ではソーシャルメディア経由の瞬間的で急激なアクセス数増加は決して珍しいことではないとお話しましたが、もしそうしたことが起きれば、あっという間に上に示したような “Service Temporarily Unavailable” な画面が表示され、

  • Webサイトが表示されない

といったことになるでしょう。

管理や監視が手薄だからトラブルが起きる

レンタルサーバー会社は、自社が保有しているサーバーのOSやサーバーソフトウェアのメンテナンス・セキュリティアップデートなどを行わなければなりません。実は、あなたが想像している以上にその頻度は高く、求められる技術レベルも高いものです。また、機器が正常に稼働しているか?ハッカーやクラッカーからの不正なアクセスはないか?DoS攻撃はないか?といったような管理・監視も行わなければなりません。

当然、それらには人的コストがかかりますし、優秀な技術者を使って細かに対応すればするほどコストは膨らみます。このコストはレンタルサーバーの利用料金に載せられるべきものですが、利用料金を安価に抑えるためにはこのコストも削らなければなりません。

管理・監視を手薄にしてしまうことで、サーバー機器が故障したり、攻撃に気づかなかったり対処できなかったり、人為的ミスが発生したりなどで、

  • Webサイトの表示速度が遅い
  • Webサイトが表示されない
  • Webサイトのデータが消失する

といったトラブルとなるのです。

次ページでは、こうした理由で発生する共用サーバーのトラブルを踏まえた上でのレンタルサーバーの選び方について解説します。

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