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コンバージョン率 1%なら100クリックで1コンバージョン。は誤り ─ 広告費はいくら必要? 日予算の決め方

「広告のコンバージョン率が1%ならば、100クリックで1件のコンバージョンを獲得できる」── そのように理解している方は意外と多いようです。しかし実際には、100クリック = 100件の流入があったときに1件以上のコンバージョンが発生する確率はわずか63%。それを90%まで高めるには、少なくとも230件の流入が必要となります。ここの理解を誤っていると、成果の期待値や広告予算の決め方を見誤ってしまいます。正しい理解に努めましょう。

広告運用者でも約半数が、コンバージョン率を正しく理解できていない現実

「広告のコンバージョン率(CVR)が1%なら、100クリックで1件のコンバージョン(CV)。平均クリック単価(CPC)が200円なら、100×200 = 20,000、つまり日予算20,000円を組めば1日1件のコンバージョンを獲れる。

このような説明を見聞きしたことがある方は多いと思います。

先日、と言っても随分経ちますが、クライアントさんのGoogle 広告アカウントで日予算を検討していた矢先、日本ではただお一人のはずですが、Google 広告のダイヤモンドプロダクトエキスパートでいらっしゃる新田真隆さん(acssemble)が偶然にもタイミング良く、次のようなポストをなさってました。

新田さんは【運用型広告にちょっと詳しくなれるクイズ】を出題してくださってまして、「わかっているつもりでわかっていない。知ってるつもりで知らない。いや、そもそも知らない」を炙り出してもらえます。運用型広告に関わっている方には、フォローを強くオススメします。

さて、注目すべきは「100%」との回答が30.4%もあったことです。回答者は新田さんのポストを目にした方々ですから、少なくとも運用型広告に興味・関心がある層で、かつ、内製・代理店など所属の違いはあるとしても、多くは広告運用に関わる方々だと考えられます。

それでも、不正解の「100% / 81% / 74%」と回答した人の割合は合計で約46.3%。約半数がコンバージョン率を正しく理解できていないという結果です。

ナゼ正解は63%なのか?

「コンバージョン率が1%なら、100件の流入で1件のコンバージョン」
この理解、いえ、誤解が広まりやすいのは、直感的でわかりやすいからでしょう。

0.01×100 = 1

だからです。ただ、これは誤りです。
鍵となるのは、「余事象」という考え方です。

「少なくとも1件のコンバージョンを獲得できる確率」は、全体から「1件もコンバージョンを獲得できない(という余事象の)確率」を引けば求められます。

コンバージョン率が1%であるならば、100件の流入のうち、

  • 1件の流入がコンバージョンに至る確率: 1%
  • 1件の流入がコンバージョンに至らない確率: 99%(= 0.99)

ですから、「100件の流入があって、1件もコンバージョンを獲得できない確率」は、

$$ 0.99^{100} \approx 0.37 $$

より、約37%であるとわかります。

従って、「少なくとも1件のコンバージョンが発生する確率」は、

$$ 1 - 0.99^{100} \approx 1 - 0.37 = 0.63 $$

となり、約63%と求められます。

ここで重要なこと、理解したいことは「コンバージョン率 1% = 100件の流入で必ず1件のコンバージョンを獲得できる」のではなく、

「コンバージョン率 1% = 100件の流入で平均的(期待値的)には1件のコンバージョン獲得に近づく」

ということです。

そして、現実として「100件の流入があっても、その約3回に1回はコンバージョンが0件」ということです。

少なくとも1件のコンバージョンが発生する確率を90%にするには?

100件の流入で少なくとも1件のコンバージョンを獲得できる確率は63%であることはわかりました。

しかし、1日に1件は確実にコンバージョンを獲りたいとしましょう。

どうでしょうか? その確率が90%にでもなれば、1日に1件はコンバージョンを獲れると。そのように期待しても良いと思います。勝率90%の先発ピッチャーが登板すれば、その試合は勝てると思いますよね。

ここからが本題です。

「少なくとも1件のコンバージョンを獲得できる確率P」は、一般に、

$$ P(\mathrm{CV}\ge 1)=1-(1-\mathrm{CVR})^{n} $$

で表されます。ここでnは流入数、クリック数です。

コンバージョン率 1%で、少なくとも1件のコンバージョンを獲得できる確率Pを90%以上にしたいならば、

$$ 1 - (1-0.01)^n \ge 0.9 $$ $$ 1 - 0.99^n \ge 0.9 $$

より、これを満たす最小のnを求めると、約230となります。

つまり、コンバージョン率 1%ならば、約230件の流入があってようやく「90%以上の確率で1件のコンバージョンを獲得できる」というラインに到達するのです。

日予算はいくら必要か?

平均クリック単価(CPC)が200円であったとしましょう。

平均(期待値)ベース
100クリックで1件のコンバージョン獲得と考えるので、100×200 = 20,000円
90%の確率ベース
230クリックで1件のコンバージョン獲得と考えるので、230×200 = 46,000円

となることから、現実的な日予算は46,000円であるとわかります。

つまり、「コンバージョン率 1%だから、日予算20,000円で1日1件のコンバージョンを獲れる」という考え方・計算はわかりやすい一方で、日次で見るときの設計としてはあまりにも短絡的であり、誤りでもあることから、実際にはコンバージョンが発生しない日が多くなるのです。

「2日間でコンバージョンを1件獲れれば良い」という妥協に潜む罠

ここで、「1日あたり46,000円もの広告費は無理だから、日予算を半分の23,000円にして、2日間かけて230クリック集めてコンバージョンを1件獲れれば良いと、妥協しよう」と考えるかもしれません。

しかし、広告クリック、流入は「独立試行」であることによる罠があります。

前日のクリックの結果は今日のクリックに影響を与えません。ですから、日予算を分割すると「その日にコンバージョンが上がる確率」は低いままです。

日予算: 46,000円(230クリック)
その日のうちに少なくとも1件以上のコンバージョンを獲得できる確率は90%
日予算: 23,000円(115クリック)
その日のうちに少なくとも1件以上のコンバージョンを獲得できる確率は約68%

日予算を半分にすると、「115クリックの繰り返しのうち、3回に1回はコンバージョン0件(32%)」というギャンブルを毎日繰り返すことになります。

もし、コンバージョン 0件が数日続いてしまったとき、それが「運が悪かった『偶然』」なのか? それとも「広告そのものに問題がある『必然』」なのか? その判断がつきづらくなってしまうのです。

多くの場合でその不安に耐えきれず、広告設定をいじり倒して自滅してしまいます。

偶然か?必然か?を見極めるために必要な期間

上述の通り、日予算を抑えて運用すると「コンバージョンが上がる日」と「上がらない日」とがバラついたり、「コンバージョンが上がらない日」が続いたりします。

ここで重要になるのは、「どの程度のデータが溜まったら、その広告やランディングページ(LP)の良し悪しを判断するか?」です。

1日単位のデータでは判断できないからこそ、複数の日のデータを合算した「累計クリック数」で見る必要があるのです。

「クリックは独立試行だから、日を跨いで合算することに意味はないのでは? ここまでの話と矛盾していないか?」と思われるかもしれません。
確かに、合算したところで明日の「コンバージョン1件が上がる確率」は上がりません。

しかし、データを貯めることには「今の広告やランディングページに何かしら問題がある」ことの証拠を掴むための重要な役割があります。

累計100クリックでコンバージョン0件
まだ「運が悪かった」と言える(確率37%)
累計500クリックでもコンバージョン0件
確率的に「運が悪かった」とは言えない(確率は1%未満)

つまり、日を跨いでデータを積み上げるのは「この広告やランディングページに問題があるか?」を導き出すためです。

さらに言えば「その商品やサービスに売れるだけの(買ってもらえるだけの)魅力や価値があるか?」です

独立試行だからこそ、短期的な「偶然」や「運」に惑わされないよう、あらかじめ「累計で何クリックまでは、コンバージョンが0件の日が続いても検証を続ける」というルールを決めておく必要があるのです。

AIの「学習」を止めないための設計

もう一点、昨今の広告運用で避けては通れないのが、AI(機械学習)の存在です。

AIは「コンバージョンデータ」を食べて賢くなります。予算を絞って独立試行の罠に晒されると、コンバージョンが上がる日と上がらない日のバラつきが激しくなり、AIは「何が正解かがわからない」状態に陥ってしまいます。

すなわち、「今日、確実にコンバージョン1件を獲りに行く予算」を組むことは、単に安心を買うためだけではなく、AIに安定したデータを与え、最短ルートで最適化を完了させるための「投資」でもあるのです。

ナゼ誤解が生じるのか?

その理由は単純です。人は普段「平均(期待値)」で考えるからです。
その方が、わかりやすいからです。

コンバージョン率 1%
  だから100クリックで1件のコンバージョン
  だから日予算は...

この発想はごく自然であるし、説明もしやすい。

その一方で、広告運用の現場で期待されるのは大概、

「今日、コンバージョンが上がるか上がらないか?」

です。

平均(期待値)で予算を立てると、広告インプレッションもクリック数も足りず、「コンバージョンが上がらない日」が想定や期待より多くなり、「成果が出ない」と広告運用に関する判断を誤りやすくなります。

まとめ

コンバージョン率 1%ならば、100件の流入で1件のコンバージョン。この説明や理解は、平均(期待値)の観点での説明としては間違いではありません。

しかし、日次の成果は確率で考えるべきものです。「100件の流入で必ず1件のコンバージョン」と理解してしまっていると、広告予算の決め方も広告成果の評価もズレてしまいます。

「平均(期待値)」ではなく「確率」で見る。この視点を持つだけで、広告運用は変わります。

もしこの記事を読んで、現在の広告予算や広告アカウント設計が「平均(期待値)ベース」になっているかもしれないと感じられたならば、予算設定や運用方針を一度見直してみてください。

それだけでも、広告の評価が変わるハズです。